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◇土肥けんすけ 駄々漏れ追記◇     

◎∈∞∋漫画描きの土肥けんすけの雑記やエッセイ∈∞∋◎

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短編小説『抜け殻』 第5回(全8回)
←第4回へ

すると、どうなるか。
僕は部屋の中をうろうろし始める。
にしり・・。わずかに床がたわむ。

部屋をいじるのはまずいよな。
「まぁ、普通にアレしたんやし。別に後でおかしなことには
ならんとは思うけどな。―いや、なるか・・な?」
なるとしたら、入った時点でまずいだろう。
「事情がわからへんから友人が部屋に入るなんてなぁ、自然
やろ。それくらいでとやかく言われる筋無いわ」
ま、それもそうだ。
「けど、こっからはまずいなぁ」
なんで。
「こうやって気づいちゃたやんか。後で聞かれた時、分かっ
てていぢった、言われる」
あ。なるほど。それはまぁ、もっともだった。

で、どうしよう。
「さぁ、どうしよか・・な」
そこで僕らは、改めて立ち尽くすのだった。

閉められたカーテンの外から、硬く小さい棒を小刻みに、リズム
的にアスファルトに打つ音が流れていった。
ヒールの音って、そうと知らない地域の人が聞いたら異常な
危険音だよな・・とか思う。

思いを引き戻す。
部屋に入ったのは仕方ない。実際に、色々気が廻らずに、ただ
ただ来てしまい、入っただけなのだ。よくあることだ。しかし坂口の
言うとおり、気づいた以上は部屋の中を弄りまわすことは出来
ない。

あれ・・。
いや、そもそも弄り回しに来たのではないだろ。
「そうなんや。けど。じゃオレら何しに来たんか、いうことになる」
ん?ん?何しに来た?何しに来た・・。た・・確かめに来た。

だって、ここしかないから。

でも、実際はここで確かめることなど無い。
いないのはわかってたし、こことは関係ないことでそうなった
こともわかってる。遠くでそうなった彼の件に関してここから
発信することはないし、ここに還元されることも―、またない。

「そうや。確かめる・・いうんは、やからそれはちゃうんや。」
でも、僕らはここにいる。
「なあんも、確かめられへんことを確認に来たんやろう。
―安心したい・・とは違うか。いや、そう言い換えてもえぇかな。
わかっていても、せずにはな・・。。まぁ、ドアの鍵締めた後に、
も一度ガスの元栓締めに家に入るようなものやろか?」
それは、さっき僕が思ったことでもあった。

そうか。そういうことか。
心の下準備なしに、いきなり亡くなりましたという、平坦な固い
壁のような情報を勝手に押し付けられるのに納得できず、
凹凸があったり徐々に染み込んでくる接触をして欲しかった
のかもしれない。そんなようなことを、僕はボソボソと坂口に
言った。

「金魚な。」
と突然なことを坂口は言い出す。どこかあらぬ方に向かう声が
青っぽい蛍光灯の中で少し涼しくも漂う。
「夜店の金魚はな。家に持ち帰ってそのまんま水槽に流し
込むと水温の差で環境に適応できなくてショック死してしまう
ことがあるそうや」
・・・・・。
「人もな。人も、いきなりそういう変化与えられたら、なんか心が
ショック症状起こすんやないか。やから、そうならんよう本能
的に水温を合わせようと、状況をちびっとずつ変化させようとする
のかもしれんな。・・そう。安全装置?」
後で・・・。他人にその説明で通るかな。
「そやかて、事実やからしゃあない。水を慣らそうとしてたとしか
言いようが無い」
と、なると。ここからはどこまで許されるかだなぁ。
「ああ。んーー・・んん。どこまで許されるかや。」

何がだ、とは聞かなかった。なんとなくわかった。
気がつくと、そんなことを黙考しながら―

僕は、また部屋をゆっくりうろうろし始めていた。

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