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◇土肥けんすけ 駄々漏れ追記◇     

◎∈∞∋漫画描きの土肥けんすけの雑記やエッセイ∈∞∋◎

六年間無言で登校
◇私の、小学校六年間における登校風景―。

私は、覚えている限り低い学年から卒業まで、一人の同級生と連れ立って学校
に行ってました。いえ、別に友達ではないです。学校では全くと言っていい
ほどしゃべりませんでしたから。
それどころか「連れ立った登校」なのかどうかすら怪しかったですね、今考え
てみれば。
なんで、そういうことになっていたのかは覚えてません。誰かが決めたので
しょう。

毎朝、私は学校に行く途中に彼の家の前に立ちます。
そしてただ、立ち尽くします。彼が出るのを待って立ってます。
別に呼び鈴も押さないし声もかけません。
そうしろと言われてないですから、誰にも。

すると、何分後かに彼が二階の窓から顔を出します。声はかけません、お互い
に。そんな決まりは聞いてないですから。決まってたのは家の前に来るだいた
いの時間だけ。
ああ、そうでした。今、思い出しました。私は彼の部屋がある二階の窓を
ずっとただ見ていたものです。彼が窓から覗くまで。
しばらくすると彼がドアから出て来ます。大抵、お互い挨拶もなく無言。
そして登校します。
その間も、ほぼ無言。十分くらい。

私の記憶している限り・・・。
朝の登校、六年間のうちで彼としゃべったのは数える程度だった気がします。
理由は多分、しゃべるように言われてなかったからじゃないかと思います。
別に支障はなかったですね。色々妄想しながら歩いてましたから。
他にどうしたいとも、いやだとも思ってませんでした。私は自分の「範囲」を
侵食しない限り、周りがどうだろうと興味がないのでした。昔から。

まぁ、だから無造作な鉄の音とか出されて妄想を中断させられることに異常な
怒りを覚えるのでしょう。怒りなんてものではないですね。あれは憎しみ、
殺意です。
その意味で、六年間いっしょに登校した彼もまた寡黙な人間だったので、支障
はなかったのです。
思い出すに、高い音を立てない人でしたね。絵はうまかったです。卵型を描い
てグレートマジンガーを描くんです。間違いなく私より2ランクは上の絵
でした。

・・・彼が中学に入ってから、わかりやすいグレかたをしたのは残念でした。
突然、口汚くなり、格好も派手になり、上目遣いになりました。
お父さんが亡くなったのだと後に聞きましたが。

いえ、中学は道が違うので一緒に行かなかったのです。私はどうしろとも
言われなかったので、決まった道を毎日一人で通ってました。
彼がどういう道で同じ学校に通っていたのかはわからないです。
というより、なにしろ今この瞬間初めて「彼も通っていたのだな」と気づいた
ものですから。そうか、突然学校に現れないものな。
当然、卒業まで三年間一度も話をしませんでした。別に嫌ってませんでした。
単に必要を感じなかったのと要請もなかったものですから。
そうして彼は「私以外の人」という括りになって視界から薄らいだのでした。

ただ一度。
ある日、彼が喧嘩しているのを、一度だけ見たことがありました。グレ方も
板についてきた頃でしたね。(でも、それなら銀縁はやめればいいのに―
と私は思ってましたが)
休み時間、何やら言語以外の奇声が聞こえてきたので、私が廊下から隣の教室
を覗き込むと、彼は顔を真っ赤にして何かをキイキイ喚いてました。敵は見え
ませんでした。
そして、彼の右手には黒板消しクリーナーが。あの無意味にでかい奴です。

彼はそのままクリーナーで殴りかかったようでした。敵は見えませんでした。
コードが・・。生徒がひっかからないように壁に一部固定された電気コードの
金具が、ブチブチと外れていきました。彼は机にぶつかりながら逃げる誰かに
向かいクリーナー振り回し―、けどコードが机にひっかかり「きぃぃぃぃ」
と喚いたあげく、クリーナーを投げたようでした。おもしろい音がしたよう
です。が、私はよく聞こえませんでした。
なにしろ、その頃には自分の教室に戻ってましたから。音がうるさかった。

私は自分の席に戻りながら、「そうでなくっちゃ」と思ってました。
「そうか、武器か」とも思ってました。

男の喧嘩は素手でとかいう、道場上のスポーツと喧嘩をごっちゃにしている
やからとはやはり違いますね。スポーツ喧嘩の方々は
「武器使って、明日顔合わせられるか」という風に、次の日友達に戻れると
考えて周りの評判も考えて喧嘩してるのでしょうが、私やそして、恐らく彼も
違います。「自分の内的境界への侵攻を許したら終わり」と思っている人間に
とっては、ゼロかすべてです。
その代わり、そういう状況でない限り、我慢出来る限り、出来るだけヘラヘラ
笑ってますが。そうそう限界を迎えては生きて行けません。
恐らくはそうであろう彼がああなったのなら、それは勝つためにはなんでも
やるべきですから―
なるほど武器ですね。

その後、彼がどうなったのかは知りません。
ほんとあれからどうしたのだろう。喧嘩最後まで見ればよかったかな。でも
目が合ったら私はどうしたらいいかわからなかったろうな。彼もどうしていい
のかわからないだろうな。
願わくば相手の額に一太刀を。
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